Kristof Sehmke, Bram Smits 12月 16, 2021

CORPORATE

2022年における3Dプリントのトレンド:
3Dプリント向けスマートデータの高まる重要性

今日、企業が複数拠点における量産に3Dプリントを活用することで、3Dプリントは工場の現場を変え続けています。これまで3Dプリントによる生産の多くは従来の製造プロセスとは切り離されて行われていました。しかしこの2つの製造環境の間の壁がなくなると、2つのエコシステムはつながり始め、より連携のとれた製造環境を作り出すことができます。

このように統一されデジタル化された生産環境は、より高い効率性、再現性、規模、管理を可能にしますが、そのためには共通のリソース、共通の言語、つまりデータが必要になります。今後、アディティブ・マニュファクチャリング(AM)におけるデータの役割は、さまざまな意味でますます重要になると考えています。

この討論会では、Materialiseの優秀な人材を集め、AMにおけるスマートデータの関連性と所有権、そして人が持つ専門知識の必要性への影響について議論します。

存在感が高まるスマートデータは2022年の積層造形において重要な役割を担う

AMにおけるデータの関連性とは?

私たちは3Dプリントを「スマートマニュファクチャリング」と呼んでいますが、これは伝統的な製造方法から生まれた言葉です。一方でAMの場合は素材と製品を同時に作るため、従来のものよりも複雑になると思われます。そのため3Dプリンティングでは従来の製造方法よりもデータの役割が重要になります。

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「スマートデータは、産業用3Dプリントの生産を変革する鍵を握っています。メーカーが生産規模を拡大する際、スマートデータを活用することで、スクラップ率の低減、造形開始前の失敗予測、厳しい品質要求への対応が可能になります」
- Tim Van den Bogaert, Materialise Software Sr. Market Director

ものづくりをスマートにできるかどうかは、データ収集にかかっています。データへのアクセスは重要ですが、それだけでは十分ではありません。製造業がスマートになるのは、データを分析して "実用的な洞察 "を得ることができたときです。これにより、プロセスを改善し、生産規模を拡大し、最終的により良い製品を作ることができるのです。

または、あるお客様の最近のコメントで、 "私たちは、次に造形するパーツが常に前回のパーツよりも優れたバージョンである世界を信じています。" とあります。そのためには、生産環境やそれ以外の場所で見られるすべてのシステムやデータセットに接続できるソフトウェアプラットフォームが必要です。

「医療用ソフトウェアでは、2種類のデータを区別する必要があります」とMaterialise Medical Innovation Manager, Pieter Slagmolenは述べています。「医療メーカーは、パーソナライズされ複雑性を増す医療機器の製造プロセスを、よりスマートに向上させることができます。その一方で、パーソナライズされたデータである『患者データ』を計画や生産プロセスに組み込むことで患者の治療を改善することができますが、プライバシーやデータセキュリティに関する新たな課題も生じます」。

Materialise MindwareのInnovation Director,Kristel Van den Berghによると、これらの課題は工業生産の状況にも当てはまるといいます。「3Dプリントは、いつでもどこでも自由に製造することを可能にしてくれます。しかし、分散型、クラウド型の製造環境が増えている中で、プロトタイプや新しいデザインなどの個人データの保護にも関心が高まっています」。

AMデータは誰のものなのか?

これは新しく生まれた疑問ではありません。データが誰のものかということはMaterialise Executive Chairman, Peter Leysにとっては最重要事項ではありません。データがあればメーカーはより良い設計やプロセスを用意することができます。つまり、真の問題は「設計やプロセスは誰のものなのか」ということです。

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ほとんどのメーカーは、設計やプロセスの所有権だけでなくその管理をすることも主張します。他のユーザーに活力を与えるために、これらの洞察の一部を共有することもあると思いますが、メーカーは所有権と管理権を維持することで、よりスマートな生産プロセスを構築し、競合他社から自社を差別化することができるのです」
Materialise Executive Chairman, Peter Leys

「データを匿名化することで、メーカーは安心してデータを共有することができ、競合優位性を示することなく、他者に権限を与え、業界のイノベーションを促進することができます」Materialise CTO, Bart Van der Schuerenは補足します。

産業界では、プロセスの専門知識や知的財産などのデータの所有権には責任が伴います。責任の所在が一社に集約している集中生産から、複数の関係者が参加する分散生産への移行に伴い、責任と義務についての新たな議論が始まっています。分散型生産を取り巻く法的枠組みは現在も準備中です。

医療用アプリケーションでは、プロセスデータは明らかに病院や医療機器メーカーのものです。AMのワークフローを構築する際には、品質保証のためにデータへのアクセスと管理が必要となります。一方、患者データの所有権についてはいまだに議論がなされています。しかし所有権が誰であれ、患者に最適な治療を提供するためには、患者データへのアクセスは必要なのです。

Round table with Materialise employees
Round table with Materialise employees
Round table with Materialise employees
Round table with Materialise employees

社内の優秀な人材を集め、AMにおけるスマートデータの関連性と所有権や、人間が持つ専門知識の必要性へのAMの影響について議論する様子

AMで人間の専門性は必要なのか?

スマートデータは、ワークフローの最適化につながり、人間の介入の必要性を減少させる可能性があります。一方で、より良い生産プロセスを生み出すには、やはり人間の専門知識が必要です。では、スマートデータは、3Dプリントにおける人の介在にどのような影響を与えるのでしょうか。

「人間の介入の役割と妥当性は、オペレーションの状況によって異なります」とKristel Van den Berghは述べています。「予測可能な標準的なオペレーションでは、多くのデータが利用可能なため、マシンが主役となり、人間は監督としての役割に限定することができます。しかし、イノベーションでよく起きるように、不確実性や曖昧さが多い状況では、創造性、想像力、直感など、より人間的なスキルが求められます。これは両極端な状況ですが、ほとんどの場合自動化と人間の介入は密接に関係しています」。

「その通りですが、AMのように大量のデータが利用できる場合でも、生産フローを自動化するにはデータだけでは不十分です」とBart Van der Schuerenは付け加えます。「なぜなら、このようにデータが豊富な状況であっても、自動化する前にプロセスを最適化するためには、人間の専門家によるドメイン固有の知識が必要だからです。言い換えれば、改善が必要な生産プロセスを自動化してスケールアップするために多くのデータを使用したとしても、結局はプロセスは改善されないのです」。

Peter Leysは、さらなるチャンスを見出しています。「データに基づいたスマートな製造は、スマートな人々に変化をもたらす機会をも生み出します。スマートな外科医は、患者の治療を改善するために、自分の経験、個人的な洞察力、解釈を活用します。同様にAMにおいても、プロセスに人間が持つ情報を活用することで、企業は違いを生み、差別化することができるのです」と述べています。

第三の要素

「画期的なイノベーションは、関連性がないように見えるものの間に関連性を生み出す能力にかかっています」とVan den Berghは言います。「コンピュータは人間よりも早く関連性を処理できるかもしれませんが、人間の脳は、与えられたデータセットの中で自然には現れない関連性を作り出すことができます。それが人間とコンピュータの違いなのです」。

「つまり、スマートデータの増加が人間の専門知識を置き換えたり、人的介入を減らしたりするのか?という質問への答えは「ノー」です!」。

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企業は人工知能だけでなく、人間の専門知識にも投資する必要があります。しかし、第三の要素である人工知能と人間が持つノウハウをうまく連携させるためのプロセスに投資しなければ、やはり失敗するでしょう。
- Director of Innovation for Materialise Mindware, Kristel Van den Bergh

結論

3Dプリントにおいて、スマートデータがますます重要な役割を果たすことは明らかです。その一環として、データの所有権について考えるだけでなく、「誰がデータを管理するのか」を自問する必要があります。結局のところ、3Dプリントが成功するかどうかは、適切なハードウェアとソフトウェアがあるかどうかだけでなく、実用的な洞察を得るためにデータを収集し、利用し、適用する能力があるかどうかにかかっています。

人間的な側面も存在します。データを活用してよりスマートで自動化された製造が行われるようになると、人間がオペレーションに介入する必要性は減ります。これにより、熟練したエンジニアは、独自の生産プロセスを定義し、微調整するという、彼らが最も得意とする作業に時間を割くことができます。今後の課題としては、3Dプリントの各段階で、人工知能と人間が持つノウハウという2つの要素がどのように連携し、お互いを高め合っていくのか、実行可能なプロセスを確立することが重要です。

2022におけるデータと3Dプリント

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