Cecilia Koshiikene 8月 17, 2021

MANUFACTURING

3Dプリンターと世界最速のソーラーレーシングカーの出会い

太陽電池、バッテリー、空気力学、そしてエレクトロニクス。これらの技術は、私たちが必要とするエネルギーの大部分を太陽の力だけで持続的にまかなうための道となるかもしれません。しかし、太陽を唯一の燃料源として使用するレーシングカーを作ることは可能なのでしょうか?その答えは、「イエス」です。 Agoria Solar チームはそのためにMaterialiseとパートナーシップを結びました。

1987年以来、世界中のチームがオーストラリアのアウトバックを舞台に、スリリングでユニークなソーラーカーレースに参加しています。ソーラーカーのF1とも言われるワールド・ソーラー・チャレンジ。主に大学を中心としたチームが、コンセントにつなぐ必要のない、太陽の力を原動とする車を作っています。つまりこれは、時速120キロで走る車輪付きのソーラーパネルです。

このチャレンジは単なるレースではありません。未来の世代のことを考えて、科学の限界へのチャレンジでもあります。よりクリーンで、緑豊かな環境に優しい方法でレースを行うことを目指し、その夢を実現すべく懸命に努力する若者たちの情熱が、このイベントの原動力となっています。21カ国から集まった44チームが参加するレースでは、最先端の技術を適用したソーラーカーが限界に挑戦します。軽くて空力に優れていればいるほど、より長く、より速く走ることができます。つまり車体の効率化が重要となります。

 KU Leuven students working on solar car

KUルーヴェン大学工学部の学生20名が、ハイテクなソーラーカーの開発に携わった

新しいシーズン、新しいチャレンジ

残念ながら、現在のパンデミックとオーストラリアの厳しい旅行制限のため、今年初めにレースの中止が決定されました。レースの中止は世界中のソーラーチームにとって残念なことではありましたが、彼らはすぐに力を合わせて新たなチャレンジへと動きはじめました。KUルーヴェン大学の工学部の学生20名で構成された Agoria Solar チームは、2021年10月、モロッコのサハラ砂漠を横断する新しいソーラーレース「ソーラーチャレンジ・モロッコ」に参加します。

世界中の大学から集まった学生チームが、アトラス山脈の麓を走る2,500kmのドライブを競います。ベルギーの新型ソーラーカー「ブルーポイント・アトラス」は、まさにこの山脈にちなんで名付けられました。

今シーズンの目玉機能は、車輪が3つしかなく、独特の流線型をした弾丸のような形をしていることです。この流線型の形状は、走行時の空気抵抗を最小限に抑え、ソーラーカーのエネルギー消費量を大幅に削減することができます。

そしてもう一つの注目点は、今年初めて自作した電気モーターの独自デザインです。この独自設計のエンジンは、市場で入手可能などのモーターよりも高い98%の効率を誇ります。

BluePoint Atlas solar car

ユニークな弾丸のような形状のブルーポイント・アトラスソーラーカー

ベルギーの Agoria Solar チームがMaterialiseと提携

工学部の学生チームは、夏の初めから、他国のソーラーチームと新たなチャレンジに挑むことを第一の目標として、新しいソーラーカーの設計に取り組んできました。経験豊富なチームは、2019年のチャンピオンに輝いた時の調子を維持し続けるようにしています。この時はMaterialise と提携してバッテリーケースを設計したこともあります。

3Dプリンター で作られた製品が何度も証明してきたように、AMは従来の製造方法では作れない軽量化構造を造形するのに最適です。「3Dプリントでは、基本となる3つの異なる瞬間があります。まず、試作段階、次に計算通りに動作しているかどうかを確認する検証段階、最後に車のパーツです」と Agoria Solar チームのメカニクス責任者であるBart Depredomme氏は説明します。

今年は、バッテリーケースとステアリングハンドルという2つの主要な自動車用パーツの開発にMateialiseが協力しました。Bart Depredomme氏は、Materialiseの専門知識がプロジェクトの成果を大きく変えると言います。「バッテリーケースは空気の流れを確保する必要があるため、複雑なデザインになっています。また、ステアリングハンドルは、人間工学に基づいた柔軟な素材を使用する必要があります。Materialiseのおかげで、デザインを改善し、耐久性と信頼性のある車にするためのアイデアを練ることができました」。

実際、2,000kmの耐久レースに出場する場合、何が起こるか予測不可能で、わずかな運転ミスや技術ミスがすべてを危険にさらす可能性があります。だからこそ、サハラ砂漠の真ん中で5日間走り続けるためには、信頼できるサプライヤーを確保することが重要となるのです。

Solar car race in the desert

Agoria Solarチームは、モロッコのサハラ砂漠を横断する新ソーラーレース、「ソーラーチャレンジ・モロッコ」に参加

前回のレースでは、競合チームがレース中にバッテリーケースが炎上するというアクシデントに見舞われました。言うまでもなく、炭素繊維と可燃性のバッテリーで作られた130キロで走行するソーラーカーでの事故は経験したくはありません。そのためには安全性が最も重要です。「安全上の理由だけでなく、車のパーツを修理するために停止するのはタイムロスです。だからこそ、パートナー選びには慎重を期しているのです」とDepredomme氏は説明します。

また、Materialiseの造形データ作成用ソフトウェアMagicsを使用することで、どれだけ時間を節約できたかにも触れています。「このソフトウェアは、すべてを簡単かつ迅速にしてくれます。このソフトウェアのおかげで、すべてのパーツが造形可能であること、高品質であることを確認でき、コストのかかる造形失敗を回避することができました」と、Agoria Solarのチームメンバーはパートナーシップの成功を祝いながら説明します。

今秋、アフリカ大陸での国際レースに挑戦予定のソーラーチーム。私たちは、彼らの幸運を祈りながら BluePoint Atlas の応援をします。

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