Srinivasan Varahoor

患者に固有のデータを使ってベンチトップ試験用モデルを製作することは、正確で現実的な試験を実施するための重要なポイントとなります。Medtronic Endovascular社のSrinivasan Varahoor博士は言います。「患者固有のデータに基づいて試験模型を製作する過程で、Mimics Innovation Suiteが役に立ちました。私たちは、各種のステントを試験用の模型に取り付けて試験を実施することにより、性能の定義と定量化を行っています」。形状パラメータを使って人体組織の状態を数値化し、3次元画像処理とCADツールによって患者ベースの模型を開発する手法は、Medtronic Endovascular社にとって大きな革新的な解決策となりました。

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Stent graft design used to treat Thoracic Aortic Aneurysms

先端医療を通して人々の健康増進に貢献するMedtronic社

Medtronic社は、医療技術分野の世界的なトップ企業です。同社のEndovascular部門では、胸部大動脈瘤などの循環器疾患の治療に使われる器具の設計と製造を行っています。Medtronic Endovascular社では、患者への支援と循環器疾患に関する啓蒙活動を展開し、人々の健康増進と新たな治療方法の可能性を絶えず追求し続けています。同社では、医師への支援を通して全世界の20万人以上の患者の治療に貢献してきた実績があります。

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Aortic model generated from centerline and geometric parameters

ステント試験用模型の新しい設計法

Medtronic社では、胸部大動脈瘤の治療に使われるステントグラフトを試験する際に、体内での性能を正確に再現する模型を開発することを目指しています。こうしたステントグラフトは、患者の健康維持に欠かせないものであることから、同社では、その試験に使用する模型の設計方法を新たに開発しました。Medtronic社では、統計解析と開発した試験模型を組み合わせて、自社製の器具が過酷な状況下でも性能を発揮することを確認しています。

開発された方法は、Mimics Innovation Suiteを使って、実際の患者データから形状パラメータを抽出し、これに基づいて体内での条件を定義するというものです。まず、撮影された患者のCTデータが集められ、研究開発チームの元へと届けられました。開発チームは、マテリアライズのMimicsソフトウェアを使い、データセットから、3次元の大動脈モデルをセグメンテーションしました。Mimics内では、大動脈モデルの形状に適合するセンターラインが自動的に計算されます。さらに、過酷な使用条件を再現するために、センターラインの形状を調整して、個々の形状パラメータの95パーセンタイル値に適合させました。このように、実際の患者のデータと統計学的に評価された形状パラメータを組み合わせたハイブリッド手法を使うことによって、血管モデルは、試験目的のあらゆる要件に適用することができます。

ハイブリッド型のセンターラインが完成すると、次にマテリアライズの3-maticソフトウェアを使い、患者のデータに基づいて、薄い壁から構成される大動脈のモデルが作成されました。その後、サポート構造と試験用固定具の設計が追加され、アディティブマニュファクチャリングによって、実際の試験用の模型が造形されました。


Patient-based aortic model

完成した模型は、流体循環機能の付いた試験装置に取り付けられ、ステントグラフトとデリバリーシステムに関する複数の性能項目の評価と定量化が実施されました。

Medtronic社による患者ベースの試験装置の設計手順は、以下の5段階に分けて考えることができます。

  1. 形状パラメータの測定
  2. センターラインの計算
  3. 統計モデルに適合するようにセンターラインを調節
  4. 試験装置の設計
  5. アディティブマニュファクチャリングによる模型の造形

Patient-based aortic model

Mimics Innovation Suiteによる将来の可能性

Mimics Innovation Suiteを使って生体形状を定量化し、患者ベースの標準モデルのセットを用意したことによって、Medtronic社におけるベンチトップ試験の水準は他の追随を許さないレベルに達しました。Srinivasan Varahoor博士は、「Mimicsによって不具合の起きる条件を定量化し、3-maticによって、そうした性能限界を考慮に入れた次世代の試験模型を開発することができた」と言います。これらの模型は、試験を通して不具合が発生する可能性のある条件を体系的に特定するのに役立ち、ひいては設計の信頼性の向上に寄与します。この手法は、将来のあらゆる血管治療器具の試験と開発に応用することができます。

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